2022年10月に読んだ新書、単行本、小説、漫画。
- 書籍は付箋を貼った要点メモ
- 小説、漫画は感想を一言
10月は新書5冊、小説2冊でした。
新書
本当のことを言ってはいけない | |
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著者 | 池田清彦 |
発売日 | 2020/1/10 |
「日本すごい」と馬鹿の一つ覚えみたいに騒ぐけど、本当に「すごい」のは日本の凋落速度だ! 人気の生物学者が、独自のマイノリティ視点で快刀乱麻を断つ。世間にはびこるウソと無駄を見抜くエッセイ。
- 前立腺がんの治療後の5年生存率は98%を超えている。30年前程は50~60%だった。早期発見、早期治療で予後が良くなったと思われるかもしれないが、その間、同様に早期発見、早期治療が進んだ大腸がんの5年生存率はほとんど変わらない。
- 前立腺がんの場合は、放っておいてもしなないがんもどきを見つけて治療しているので、未果江場の生存率があがったわけだ。
- 日本で大量に使われている除草剤以外の二つの恐ろしい農薬農薬はネオニコチノイドとフィプロニルで、EUでは現在、基本的に使用禁止である。
- 東京農工大の丸山直樹名誉教授はシカの食害で日本の山林が荒廃していく現状を憂えて、日本オオカミ協会を立ち上げ、オオカミを日本の野山に復活させて、シカ害から日本を守ろうとの運動をしている。
天才たちの未来予想図 | |
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著者 | 斎藤幸平,小島武仁,内田舞,成田悠輔 |
発売日 | 2022/9/29 |
予測不可能な時代を生き抜くヒントを「最先端の知性」がはじめて明かす!
- 無限の経済成長を有限な地球上で求める資本主義で危機は解決できないというのが、晩年のマルクスが考えていたこと。
- トマ・ピケティも最近は社会主義を掲げていて、お金持ちの遺産を相続する際に、95%くらいを税金で取り上げて、そのお金を成人を迎えた人に一千万円ずつ配るといった政策を提唱している。
- マルクスが思い描いていたのは「自分の能力に応じて、他の人に与え、必要に応じてみんなから受け取る社会」であり、この相互扶助の原理を「コミュニズム」と呼んだ。
- マッチング理論では、いわば資本主義と社会主義のミドルグラウンドで制度を組み立てていく。
- ゲール・シャプレー(GS)というアルゴリズムではミスマッチが一切存在しないという性質がある。
- うつ病の遺伝要因を持つ子供は、脳の働きとして外界からの刺激に対して負の感情を持ちやすくなっている。
- 偏見にもとづく、ちょっとした侮辱や否定的な態度のことを「マイクロアグレッション」という。
スタグフレーション 生活を直撃する経済危機 | |
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著者 | 加谷珪一 |
発売日 | 2022/9/30 |
賃金が上がらず、物価だけが上昇する状況では、もはや単純な節約では乗り切れない。これまでとは異なる対処法が求められる。
- エネルギーや食糧は需要が増えても簡単に生産量を増やすことができない。世界の需要拡大は10年くらい前から顕著となっており、供給が追い付かないリスクは認識されていた。
- 特定の一時産品が値上がりしただけで、経済圏全体の物価が長期に渡って継続的に上昇することはありえない。その場合、マネーの膨張など貨幣的要因が絡み合っている。
- 簿価か時価かはあくまで帳簿を管理する上でのルールの問題であり、簿価にすれば担保価値が維持されるということは現実社会ではありえない。
- 日本の住宅ローンは借り手にすべての責任を負わせる厳しい契約。自宅を売却したとしても残高がある場合には完済を求められる。
- 米国は自宅を銀行に渡せばそれ以上の返済義務は発生しない。借りて負担が大きい日本の場合、変動金利が多い状態で金利が上昇すると、景気には大きなマイナス要因となる。
- 近年、貿易黒字が減っても経常収支の黒字は維持できるという日本の常識を覆すような事態が発生している。輸入額が増大し、所得収支の黒字では貿易赤字をカバーできなくなっている。
- 財政学の世界ではインフレが進むことを「インフレ課税」というが、国民にとってインフレは物価上昇分だけ課税されることと同じになる。
- 数字の絶対値だけを見れば株価が上昇しているように思えるが、物価上昇分ほどは上がっていないので実質的には株価下落と言える。単純に値動きを見ただけでは分からないのがインフレ時代の投資の怖さ。
生まれが9割の世界をどう生きるか | |
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著者 | 安藤寿康 |
発売日 | 2022/9/6 |
行動遺伝学の専門家が、一般読者の遺伝についての素朴な疑問に答えるとともに、遺伝における不平等を前提にしたうえで「いかに自分らしく生きていくか」「幸福に生きるのか」。そのための方法を論じていく。
- 効果量の足し合わせで遺伝的素質が決まるタイプの遺伝を「相加的遺伝」という。単純な足し合わせでは遺伝的素質が決まらないタイプは「非相加的遺伝」という。
- その人が自分で作る環境、自ずと呼び寄せてしまう環境には、その人の遺伝的素質が多かれ少なかれ反映されるので、環境は重水に環境の影響とは言えないというのが、環境に関する行動遺伝学の一般的な結論。
- ポジジェニックスコアの高い生徒はどんな学校でも優秀だけど、スコアが平均あるいは低い生徒に関しては学校の良し悪しが関係してくる。
- ビッグファイブ理論ではパーソナリティを外向性/内向性、神経的傾向、協調性、堅実性、経験への開放性(知的好奇心)の5因子で表す。このうち経験への開放性に知能との相関があることが分かっている。
- やりぬく力の遺伝率は37%と普通のパーソナリティの遺伝率と同程度で、共有環境の影響はなく、学力との相関もごくわずかで、その相関を生んでいるのは遺伝だった。
- 子供の知能や学力に効果がありそうな2つの要因は「静かで落ち着いた雰囲気の中できちんとした生活をさせること」「本の読みきかせをすること」である。
日本経済は再生できるか | |
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著者 | 田村秀男 |
発売日 | 2022/9/26 |
政治・企業・マスメディアが今変わらなくては「物価だけが上がり給料は上がらない」最悪の未来は続く。 経済記者としての長年の知見から導き出す、日本経済再生への道。
- デフレの日本では日銀資金は国内で回らず、ほぼそっくりドル市場に流れる。円資金が海外に出るということは円安進行を意味する。
- 消費者物価上昇に対する円安の影響度は二割程度だとされる。
- 中国は住宅を中心とする不動産開発投資によって高度経済成長を演出してきたが、高齢化とともにこの成長モデルは崩れ去り、経済は長期停滞するしかない状態にある。
- 実は2014年からの物価が賃金を越えて上昇している。実質賃金の下落が続いている。
- 先進国でプライマリーバランスの黒字化を財政目標にしている国は日本以外にない。
小説
神酒クリニックで乾杯を | |
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著者 | 知念 実希人 |
発売日 | 2015/10/24 |
医療事故で働き場所を失ってしまった外科医の九十九勝己は、知人の勧めで「神酒クリニック」で働くことに。そこでは院長の神酒章一郎を初め、腕は立つが曲者の医師達が、世間に知られることなくVIPの治療を行っていた。彼らに振り回されつつも、新しい職場に慣れていく勝己。しかし神酒クリニックには彼が知らない裏の顔が。秘密のクリニックで勝己が請け負う「仕事」とは!?
希望の糸 | |
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著者 | 東野圭吾 |
発売日 | 2022/7/15 |
加賀シリーズ最新作。小さな喫茶店を営む女性が殺された。加賀と松宮が捜査しても被害者に関する手がかりは善人というだけ。彼女の不可解な行動を調べると、ある少女の存在が浮上する。一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。彼の遺言書には意外な人物の名前があった。彼女や彼が追い求めた希望とは何だったのか。
- 東野圭吾の人気シリーズ「加賀恭一郎シリーズ」の最新作。
- 映画化もされた「祈りの幕が下りる時」で完結したと思っていたので、新作は嬉しい。
読書の習慣がある人は幸福度が高い、らしい。